日本軍の九八式将校軍衣(偕行社軍需部製)
下級将校(尉官)の給与は、かなり低くその生活はなかなか大変だったようで、
それを称して、「貧乏少尉、遣繰り中尉、やっとこ大尉」と戯れ歌のようなものがあったのは、
日本軍にご興味のある方ならご存知の方も多いかと思います。
そんな彼らの少ない給与を圧迫する要因の一つは、普段着用している軍衣袴等に代表される軍装品で、
現在ほど衣料品が安くない時代にテーラーにてそれ相応の相応の生地素材を使い制作をしてもらうのですから、
それ相応のお値段となってしまうのは必定!財布泣かせだったようです。
そんな貧乏下級将校達の財布事情の悩みを軽くしてくれるのがテーラー製の特注品ではなく、
それよりははるかに廉価で既製品のいわゆる吊るしの軍衣袴でした。
このページにて紹介をしている九八式将校軍衣は、その既製品のものでして、
襟元のタグに偕行社軍需部製になります。
偕行社は将校の互助会組織でして、だからこそお金に窮する尉官将校の要望に応えたのでしょう。
こちらは、ほとんど使用されなかったのかほとんど傷汚れがなく極美品と言える代物で、
将校金ボタンの塗装剥げもない当時の雰囲気をそのままの形で残すコレクションアイテムになります。
また、テーラー等の特注品は注文者の将校の好みが反映されることが多く、
規定より若干の違いが出ますが、こちらの紹介品は規定通りに制作されているがために、
基本的な九八式将校軍衣のデザインが分かるコレクションとしても嬉しいですね。
廉価な吊るしのために、テーラー特注製より日常勤務にて使い潰されることが多いのですが、
今に至るまでにここまで良い状態で残っていることも奇跡的であるといえるでしょう。